スタッフインタビュー
中村憲由監督
-
――原作の印象について聞かせてください。
中村憲由監督(以下・中村監督):原作があまりにも面白くて、衝撃を受けました。もう何十回読み返したかわかりません。電車の中で、毎日のように読んでいますよ。
自分は「この作品はキャラクターのギャップのギャグだ」と思っていて、スタッフや声優さんたちにも、そのように言っています。
カイン君はスーパーマンのような存在でありながら、みんなに怒られていますよね。国を救うような活躍をしても、帰ってきたら王様に怒られる。ティファーナも近衛騎士団の団長でありながら、カインの前ではグダグダで…そんなキャラクターたちのギャップが面白い作品だと思うのです。
ですから作画の皆さんには「表情をコロコロ変えてください」と言っていますし、声優さんたちにも「二面性のあるキャラクターです」と伝えています。 -
――アニメ版のみどころは?
中村監督:原作がまずあって、次にniniさんがコミックを描いているのですが、原作よりもアクションがカッコよく見えるのですよ。そういう部分はアニメーションで描きたかったのですが、先にniniさんにやられてしまった(笑)。
ですから私たちは、niniさんがコミックでやっていない方向を強調しています。具体的には、コミカルな方向に寄せてみることにしました。
構成作家さんは当初、バトルもののような作品で考えていたのですが、「カイン君がイジられる方を強調して、そっちの話数を積んでください」と頼みました。おそらく原作やコミックよりも、コミカルになっていると思いますよ。 -
――異世界転生がテーマの作品ですが、演出にあたっての工夫はありますか。
中村監督:実は、異世界転生ものを監督するのは初めてなのですよ。なので、転生ものだからこう、という作りにはしませんでした。表現に迷ったときには原作を読み返しました。なんといっても、夜州先生のネタが面白いですから。
-
――声優陣の演技をご覧になっての感想はいかがですか。
中村監督:今作のキャラクターたちには、みな二面性というか、変わり身があります。その変わり身を演じられる方を揃えていただきました。
たとえば、みんなの前では居丈高でも、カイン君が出てくるとコロっと変わる。そういう演じ方を皆さんにしてもらいました。
今ではこのメンバーでないと、「転生貴族の異世界冒険録」にはなりませんね。テレス・シルクはこのお二人でないといけませんし、王様は王様でキャラが合っています。カイン君もこの人でないと、もうカイン君には聞こえない、という感覚になっています。
※キャスティングの発表は11月を予定しています。ご期待ください! -
――制作していて印象に残ったシーンはありますか。
中村監督:三話のテレス・シルクのコミカルな会話劇ですね。
経緯をお話しすると、まず一話・二話のシナリオをずっと作れなかったのです。この作品はどういう方向性にすれば良いのだろう、どうしたら夜州先生の原作をもっと面白くできるのだろうと、悩んでいたからです。
ところがテレス・シルクが出てくる三話を作ってみると、お姫様二人の会話がものすごく面白い。そこで「転生貴族はこの方針でいきましょう!」となって、一話・二話のシナリオが後から出来たのです。
だから三話の会話劇がなければ、今の作品にはなっていませんでした。これがなければ、日アニさんのような落ち着いた作品になっていたかもしれませんし、もしくはコミック寄りのバトル作品だったかもしれませんね。 -
――放送されるのが楽しみなシーンはありますか。
中村監督:一話の最後はカイン君のお披露目会なのですが、お披露目会というのは、作品全体で三回くらいあるのです。五歳になった時、お屋敷、そして王都といったふうに。
そこで一話のお披露目会をどう盛り上げるか考えていたのですが、コミック版ではゾンビが出てくる展開になっています。これは夜州先生の書き下ろしなのですね。
そこで「うちにもなにかないですか」と聞いたら「こういうのを出したらどうですか」というメモをくれました。一話のクライマックスはこれを基にしているので、アニメ版のみの書き下ろしのようになっています。原作ファンのみなさんには、期待してほしいですね。 -
――最後に、視聴者の皆様にメッセージをお願いします!
中村監督:カイン君がいて、テレス・シルクがいる。このキャラクターたちが喋る、話す。それだけでもうドキドキします。監督なんかいらないのでは、と思うほどです(笑)。
そして今作は未知瑠さんに音楽を担当していただいたのですが、フルオーケストラなのですよ。その曲に乗せてカイン君やテレス・シルクたちが会話をはじめます。今ではその曲が鳴っただけで、「あっ、カイン君がはじまる!」と感じてしまいます。
知恵をこらしてくれたスタッフ、そして声を吹き込んでくれた声優のみなさん方が、この番組の魅力だと思います。